AI時代におけるアナログ価値の高まりと、推し活ブームとの関係
近年、デジタル化のスピードが凄まじく、特にAI技術の進化には目を見張るものがありますよね。
多くのサービスがデジタル化されて、もはやスマホ無しでは生きていけない…なんて人も多いのではないでしょうか。
情報処理の効率化や自動化が進み、仕事や生活がより便利になる一方で、それに逆行するようにアナログの価値を再評価する現象が起きています。
たとえば、音楽、出版、文具、写真といった分野で「アナログ回帰」の動きが活発になっていて、音楽をレコードで聞いたり、フィルムカメラで写真を撮ったりと、時短が優先される時代にあえて時間や手間のかかることに興味を持つ若者が増えているそうです。
さらに、興味深いのは人気の「推し活」も、この「アナログ回帰」のトレンドと密接な関わりがあるとのこと。
本稿では、AI・デジタル社会だからこそ求められる“アナログの力”と、その象徴ともいえる“推し活ブーム”との関係性について考察してみたいと思います。
■デジタルが当たり前になると「アナログ」が特別なものに
かつては利便性や効率を高めるための代名詞だったデジタル技術も、今では特別なものではなくすっかり当たり前の存在になりました。
誰もがスマホを持ち、AIがテキストや画像を生成し、音楽や動画もサブスクで無限に視聴可能。分からないことは音声アシスタントに聞けば、何時でも即座に答えてくれます。
しかし何でもすぐ手に入る時代だからこそ、逆に「手間をかけたり」「手にふれたり」する「アナログの価値」が見直される動きもあるようです。
「やっぱり紙の本が落ち着く」
「フィルムカメラで撮るのって楽しい」
「レコードの音って温かみを感じる」
これらは「昭和レトロ」なんて言い方もされていますが、ブームをけん引しているのは主にZ世代といわれる若者なんだとか。
個人的には、フィルムカメラとレコードともに当時を知っている世代なので懐かしさを感じる反面、今思えばめちゃくちゃ手間。
写真は現像されてみないと上手く撮れているか分からないし、レコードは傷が付かないよう気を遣うし、全部聞くには途中で裏返さないといけないし曲も飛ばせない。でも、昔はそれが当たり前。そんな手間のかかることが、あらためて見直されたり、今の若者には逆に新鮮だったりするらしい。
●業界別に見るアナログ回帰の動き
音楽 | レコードやカセットテープといったフィジカルメディアが、温かみある音質や所有の喜びを求める若年層に支持され販売が増加。レコードに針を落とす「儀式感」がたまらないとか。 |
出版 | 電子書籍が普及する一方、装丁や質感にこだわった紙の本、ZINE(個人が非営利で発行する冊子)などの自主制作文化が盛り上がりを見せているみたいです。 |
文具 | 手書き手帳や万年筆など、書くという行為そのものを楽しむアイテムが再評価。お気に入りの文房具を使って書き留めることも今では特別な時間なのかも。 |
写真 | フィルムカメラやインスタントカメラが「エモい」として若者に人気。現像やプリントの“待つ時間”すらも体験価値になっているそう。 |
これらに共通しているのはデジタルでは得ることができない「手にとって五感で楽しむ体験」であること。
こうしたアナログへの回帰は、昭和時代を知らない若者にとっては単なる懐古趣味ではなく、現在との違いを新鮮に受け止めて、感慨深く風情のあるコンテンツとして楽しむ価値観の表れだといえます。
■推し活ブームが象徴する、アナログ的な“愛のかたち”
「推し活」とは、アイドル・俳優・アニメキャラ・クリエイターなど、自分が応援する“推し”に対して、時間やお金、エネルギーを注ぐ活動全般。
ブームになって数年たちますが、人気の陰りはいまだ見えません。
試しにGoogleトレンドで検索キーワード「推し活」の人気度を調べたのが次のグラフ。
Googleトレンド 検索キーワード:推し活 調査日:2025年7月29日 期間:過去5年間
SNSや動画配信などデジタルサービスの進化により、推しとつながる手段は格段に増えファン同士の交流も盛んです。デジタルあっての推し活ブームなのはたしかですが、興味深いのは推し活の“本質的な楽しみ”がとても“アナログ的”なところなんですよね。
●推し活とアナログ価値
リアルなグッズを集める
缶バッジやアクスタ、ブロマイドなど、デジタル画像では得られない“所有感”を大切にする。
手書き・手作りに想いを込める
ファンレター、デコうちわ、推しノートなど、手を動かして応援する文化が根強い。
現地での体験に価値を見出す
ライブや聖地巡礼といった“その場にいる”体験が記憶や心に残る。
創造性を発揮する
スケジュール帳やZINEのように、応援の記録を自分なりにアレンジする行為も広がりを見せる。
これらは全て「効率」とは程遠く、むしろ対極にある行動です。アナログ価値とはAIには代替できない「リアルな体験」や「感情的なつながり」といった物理的かつ感情的なもの。だからこそ人間らしい愛着や没入が生まれます。
■デジタルとアナログは“共生”へ
AIやデジタルが進化すればするほど、私たちの生活は便利になりますが、同時に画一化・情報過多、感情の希薄化といった課題も…。
だからこそ、アナログの手間をかける行為が「心を動かす体験」としての価値を持ちます。
推し活ブームの背景には単なるエンタメ消費だけでなく、ファン同士のつながりや唯一無二の体験を通して、喜びや共感を得たいという気持ちがあるように思います。これからもAI・デジタル技術をコミュニケーションツールとして活用しながら、デジタルでは得ることができないライブやイベントなどのリアルな体験、グッズ集めなどのリアルなモノへの消費意欲はより高まっていくことでしょう。
昨今のアナログ回帰の流れは、速く手軽に大量の情報を得たいという欲求から、スローで丁寧にひとつのことに集中する…そんな人間らしい過程を楽しみたいという願望の現れなのかもしれません。
■まとめ
●AI・デジタル技術が浸透するほど、逆に「アナログの価値」が上がっている。
●アナログ回帰の動きは、「推し活ブーム」と密接な関係がある。
●デジタルとアナログはこれからも共生していく。
AI・デジタルの浸透により、アナログな推し活グッズ需要は高まっていくことが期待できます。
サンプリラボでは、自社開発のオリジナル性の高い「推し活グッズ」を多数ご用意しているほか、既製品をベースにカスタマイズしたり、完全オリジナルのフルオーダーにも対応可能です。
気になるグッズ、その他ご相談等ありましたら、下記ボタンよりお気軽にお問合わせください。
参考にさせていただいたWEBサイト
METI Journal ONLINE/若者に「ZINE」文化じわり。個人編集の出版物続々、大手書店には専用棚
https://journal.meti.go.jp/p/37349/
目白大学 総合科学研究:論文/Z世代における「レトロブーム」の実情について(PDF)
https://mejiro.repo.nii.ac.jp/record/2000113/files/MJSNS_20_103.pdf
IDEAS FOR GOOD/なぜ今、人々はアナログに魅了されるのか?「幸福な偶然」を求める現代の価値観
https://ideasforgood.jp/2024/07/03/analogue-tech/