ビニール素材 (PVC) が環境に悪いって昔の話? 安全性は?? 調べてみると意外な結果に‥

環境負荷の少ない素材に関するお問い合せが急増しています。
弊社ホームページのアクセスログによると、今年度2021年6月1日~2022年4月30日までの、エコ素材関連ページのPV(ページビュー)の合計が、前年比の約2.3倍、全体の総PVが横ばいのなのに対して際立った伸びとなっています。
現在弊社が取り扱っているエコ素材は、主にクリアファイルなどに使用するPP(ポリプロピレン)の再生品またはバイオマスなどの代替品が中心。軟質素材のフラットケースなどに使用される塩ビ(ポリ塩化ビニル=PVC)のエコ素材はまだまだ種類が少ないのが現状です。しかし、調べてみるともともと塩ビは地球に優しい素材らしいのです。
いったいどういうことなんでしょうか??安全性についても気になっていたので、今回は塩ビ(PVC)について調べてみました。

 


弊社の塩ビ(PVC)製品たち。

 

そもそも「ポリ塩化ビニル」とは?

ポリ塩化ビニルは略して塩ビと呼ぶことが多く、業界ではPVC(Poly Vinyl Chloride)と呼ばれるプラスチック素材。一般的には「ビニール」と呼ばれることが多いですが、正式にはビニールではなく「ビニル」です。使用範囲は広く、あらゆるものに使用されています。例えば配水管やラップフィルム、壁紙や消しゴム、電源コード、ソファやテーブルクロス、自動車のシートなど挙げればきりがありません。
塩ビ工業・環境協会が公開しているプラスチック原材料の生産推移(2020年まで)によると、塩ビはPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)に次いで3位の生産量となっています。

出典:塩ビ工業・環境協会 プラスチックの種類別生産量
https://www.vec.gr.jp/statistics/statistics_4.html

 

【素材としての特長と短所】

●塩ビの長所
加工性に優れる(成型条件の幅が広く寸法精度の高い成型が可能)
耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性(酸、油、アルコールなどに強い)
耐水性(水を通さない)
電気絶縁性(電気を通しにくい)
難燃性(燃えにくく自己消化樹脂に分類)

●塩ビの短所
耐熱性(耐熱温度60~80℃)
耐衝撃性(特に低温環境において衝撃に弱い)

 


実は塩ビは「塩」からできている?!

生活に欠かすことのできない塩ビですが、一般的なプラスチックとは大きく異なる性質があります。多くのプラスチックが概ね100%の石油から作られるのに対し、なんと塩ビは石油40%、残りの60%は天然の塩からできています。
つまり近年エコ素材として注目されているバイオマスプラスチックなどと同様、製造の際に新たな石油の使用を抑制することに貢献していることになります。何十年も前から多くのものに使用されてきた塩ビは、実は環境に優しい素材だったのです。

 

1990年代には悪ものにされた過去も

環境に優しいはずの塩ビですが、その昔、環境汚染を引き起こす原因とされバッシングを受けた時代があります。最近ではあまり耳にしなくなったダイオキシン問題です。
「ダイオキシン」は人に対して発ガン性や甲状腺・免疫の機能低下、生殖障害などを引き起こす可能性のある毒性を持つ有機化合物の総称で、分解されにくく環境中に残留しやすいのが特長です。20年くらい前まではダイオキシンの発生の主原因が、塩ビを燃やすことだと考えられてきました。しかしその後、ダイオキシンの発生は何を燃やすかではなく、焼却方法に起因することが判り焼却炉と焼却条件の改善が図られました。具体的には、800℃以上の高温で燃やすことでダイオキシンはほとんど発生しなくなっています。(グラフ参照)

出典:環境省ホームページ 令和4年3月25日 ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)について
http://www.env.go.jp/press/110777.html

 

そのほか、塩ビに含まれる可塑剤(かそざい)が有害であるとされ、欧米や日本で規制されてきました。可塑剤は樹脂を柔らかくするために添加される物質で、一般的には20~30種類のものが使用されています。中でも汎用的に使われているのがフタル酸エステル系の可塑剤です。中でもすべての可塑剤の約半分を占めるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)は、人体への影響が懸念されることから1990年代から規制の対象となっています。
近年では製品に要求される性能のものが使用されるようになっていて、例えば耐熱性能が必要であれば、熱によって溶け出したりしない可塑剤を、乳幼児の玩具にはより人体への影響が少ない可塑剤が使用されています。

出典:塩ビ工業・環境協会ホームページ 可塑剤の種類と使われ方
https://www.vec.gr.jp/anzen/anzen2_2.html

 

塩ビが有害となるケースは2つ

1.燃やす
前述のとおり塩ビを燃やすと猛毒のダイオキシンが発生する。
※この問題は解決済み。現在のゴミ焼却場はダイオキシン対策されほとんど発生していない

2.添加物(可塑剤)
塩ビを柔らかくするために添加される可塑剤の中で、フタル酸エステル(DEHP)という化合物が使われている。その中に食品衛生法により使用が禁じられているものがある。

この2つが塩ビが有害とされる理由ですが、①のダイオキシンについては焼却炉の進化によって解決しているので、②の可塑剤がカギを握っているようです。

 


可塑剤(フタル酸エステル)はそんなに危険な物質なのか?

 

可塑剤工業会のホームページによると…

ヒトに健康問題を引き起こした事例はない。

EU、米国、日本の公的き起こなリスク評価においても現行の使用でのリスクは認められず現行を超える規制は必要ないと結論付け。

具体例としてラットを用いた経口投与試験においても、食塩や砂糖よりも急性毒性が低い結果であることが記載されています。

その他、懸念されている「発がん性」「内分泌かく乱作用(環境ホルモン)」についてもそれぞれ問題ないとのこと。

出典:可塑剤工業会ホームページ
http://www.kasozai.gr.jp/faq/

 

塩ビ工業・環境協会のホームページでは…

フタル酸エステルの安全性について、「安全性は確認されています。最も汎用性の高い可塑剤であり、全可塑剤の半分近くを占めるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)は、1940年代から内外で多角的に研究が進められ、その安全性は確認されています。」

①急性毒性や皮膚刺激性など極めて低いレベル。
②人に対する発がん性はIARCでは2Bグループ
 …ヒトに対して発ガン性のある可能性がある(コーヒーやピクルス、携帯電話からの電波などと同じ分類)
③内分泌かく乱作用(環境ホルモン性)がないことが確認されている。
④霊長類では精巣毒性(生殖毒性)は起こらないことが確認されている。
⑤シックハウスとの関連性は低いと考えられる。

出典:塩ビ工業・環境協会ホームページ フタル酸エステルの安全性情報
https://www.vec.gr.jp/anzen/anzen2_3.html

 

1990年代にダイオキシンの発生、可塑剤による環境ホルモン、発がん性などの懸念から「塩ビ=有害」というイメージが広がりましたが、業界の働きにより安全性を証明されてきたようです。
しかし、乳幼児は身近なものを舐めたり口に入れたりするので、可塑剤が口の中で溶け出す懸念があります。そこで小さな子どもが使用するおもちゃは、ヨーロッパやアメリカ、日本などで規制対象となり、国内では2010年頃から食品衛生法により規制が強化され、その後は安全性の高い非フタル酸系可塑剤が使用されるようになっています。また、おもちゃ以外でも食品が直接触れるラップフィルムプラスチック容器などが食品衛生法の規制の対象となっているほか、対象外の製品についても非フタル酸系可塑剤の使用が広がっています。

 


まとめ

 

〈塩ビが環境に優しい理由〉

●省資源:製造時に新たな石油資源の使用を少なくできる

●低環境負荷:他のプラスチックに比べ製造時および焼却時のCO2排出量が少ない

●長寿命:丈夫で長持ちするので石油資源の使用を抑えられる

 

〈塩ビが安全な理由〉

●ダイオキシン問題は焼却時に高温で燃やすことで解消されている。

●現在ではヒトに有害とされる可塑剤は食品や乳幼児が触れる製品には使用されていない。

 

今回調べてみて、塩ビは環境負荷が少なく安心して使用できるプラスチックだということがわかりました。
環境に優しいプラスチックといえば、再生プラやバイオマスプラばかりが注目されがちですが、詳しく知れば知るほど塩ビに対する認識が変わってきた感じです。
脱プラスチックの潮流から、新しいエコ素材が続々と開発されていますが、あらためて塩ビのポテンシャルに注目してみてはいかがでしょうか。

 


〈弊社の塩ビ製品〉
PVCフラットケース
ジッパーケース(天チャックケース)
PVCブックカバー
しおり付きPVCブックカバー
マグネットクリップ
マグネットタイル
お札が入る通帳ケース
デスクマット
捺印マット
コースター