生分解性プラスチックの誤解。バイオマスプラスチックだから生分解されるわけじゃないんです。

 

プラスチックごみ問題のなかでも、特に「マイクロプラスチック問題」「海洋プラスチックごみ問題」の解決になると期待されている「生分解性プラスチック」
たとえポイ捨てされても、いずれ微生物によって水と二酸化炭素に分解され、自然に還るという夢のようなプラスチック!…と思ってしまいますが、まだまだ課題も多いのが現状のようです。
「分解されて自然に還る」というブブンだけが、一人歩きしているようにも感じます。

一方で、再生可能なバイオマス原料を含む「バイオマスプラスチック」も熱い視線が注がれています。こちらは「生分解性」のものと「生分解性でない」ものとがあります。しかしすべての「バイオマスプラスチック」が生分解性プラスチックのように、「自然環境で分解される」と思っている人も一定数いるようです。

それを裏付ける資料がWEB公開されています。
公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会
「バイオプラスチックに間するアンケート調査結果報告」(2022年1月)には次の結果が報告されています。

●「バイオプラスチックの意味を知っている」と回答した者のうち、「バイオプラスチック」と「バイオマスプラスチック」の違いを正しく理解していたのは2割弱。

●「バイオマスプラスチックの意味を知っている」「生分解性プラスチックの意味を知っている」と回答した者のうち、4割強が「バイオマスプラスチック」はすべて「生分解性プラスチック」である(もしくはその逆)と誤解している。


このアンケート結果を見ると、「バイオプラスチック」と「バイオマスプラスチック」の違いを理解している人が2割程度と少なく、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の意味を知っていても、「生分解性プラスチック」は「バイオマス素材」からできていると認識している人が半数近くもいることがわかります。
確かに自然の中で分解されるとなると、「自然に還るんだからもともとバイオマス(生物資源)からできている」となんとなくイメージしてしまいます。
「生分解性プラスチック」を知るには、なんだか似ていて紛らわしいのですが「バイオプラスチック」と「バイオマスプラスチック」について正しく理解しておく必要があります。
次の分布図をご覧ください。

PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PLA(ポリ乳酸)、PHBH(ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)、PBS(バイオポリブチレンサクシネート)

 

全てのバイオマスプラスチックが生分解性プラスチックではない。

分布図では、タテ軸がバイオ由来か石油由来か、ヨコ軸が生分解するかしないかを表しています。そして上半分が「バイオマスプラスチック」、下半分が「石油由来のプラスチック」、右半分が「生分解性プラスチック」、左半分が「生分解しないプラスチック」です。
上半分のバイオマスプラスチックには「生分解する」ものとしないものがあり、下半部の従来のプラスチックにも「生分解する」ものとしないものがあることがわかります。混同しがちですが、生分解するかしないかは、原料にバイオマスを含むかどうかではなく、石油100%であっても生分解される種類があることを覚えておきましょう。

 

バイオプラスチックはバイオマスプラと生分解性プラの総称。

似ていてややこしいのですが、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」をひっくるめてバイオプラスチックと呼びます。バイオプラスチックには、生分解しなくてもバイオマスを原料とする種類や、バイオマスが原料ではなくても生分解する種類も含まれます。
同類と思われがちですが、バイオマスプラスチックは「原料」に着目、生分解性プラスチックは分解性にかかわる「機能」に着目していて、分類の基準が違うことから必ずしも一致しないのです。

生分解性プラスチック
自然界の微生物により水と二酸化炭素に完全に分解されるプラスチック

バイオマスプラスチック
生物由来原料100%または石油由来原料と混ざっているプラスチック

バイオプラスチック
バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称

 

生分解性プラスチックの誤解はポイ捨てのリスク要因に?

脱プラ対策が進む一方で、環境負荷を軽減する新素材の開発が進んでいますが、中でも自然の中で分解される生分解性プラスチックは、マイクロプラスチック問題や海洋プラスチック問題解決のための切り札として期待が高まっています。自然の力で消えて無くなるのですからこれ以上のものは無いのかもしれません。しかし生分解性プラスチックについて正しく理解していないと、バイオマスプラスチックだからいずれ分解されると思い込み投棄したり、リサイクルに悪影響を及ぼすことを知らず、プラスチック回収ルートに混入するなどの誤った取扱いをしてしまう可能性があります。
それらを回避するには、まず正しく理解することが必要となりますが、「バイオプラスチック」と「バイオマスプラスチック」これらのネーミングが混同しやすい現状については、より生活者に分かりやすくする必要があるように思います。

 


弊社では現在「生分解性プラスチック」の取り扱いはありませんが、「バイオマスプラスチック」の印刷・加工は行っています。

ライスレジンクリアファイル
お米由来のバイオマスプラスチック「ライスレンジ®」を使用したクリアファイル。

ライスレジンランチョンマット
お米由来のバイオマスプラスチック「ライスレンジ®」を使用したランチョンマット。
いずれもバイオマスマーク表示可。※生分解性プラスチックではありません。

 


参考文献:
公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会
「バイオプラスチックに間するアンケート調査結果報告」(2022年1月)
http://www.nacs.or.jp/kankyo/study/enq_rep_bioplastics_2022.pdf ※PDFが開きます