同じように見えても違う。リサイクルのためにも知っておきたいプラスチックの種類とは?

 

脱プラスチックの流れからクリアファイルに「再生素材を使いたい」「バイオマス素材を使いたい」といったお問い合わせをいただくことが増えています。

環境意識の高まりから、なんとなく「プラスチック=環境によくない」というイメージを持つ人が増えた一方で、身近な存在であるプラスチックについてあまり知らないのが実情だと思います。プラスチックはとても種類が多く、同じものに見えても実際には違う種類だということも多々あります。そしてプラスチックは正しく分類しないとリサイクルにも影響してしまいます。
プラスチックの多くはリサイクル可能。ただ使わないようにするという発想だけでなく、使う側がプラスチックに対する知識を深めていく必要があるように思います。 そこで本稿では、一般的にあまり知られていないプラスチックの種類についてまとめてみました。

 

プラスチックの種類は大きく分けて2つ。

早速ですが、プラスチックは大きく分けて次の2つに分類されるのをご存じでしょうか?

 

熱可塑性プラスチック

熱硬化性プラスチック

 

熱可塑性(ねつかそせい)プラスチックと熱硬化性プラスチック。
聞きなれない言葉ですが、私たちが使っているプラスチック製品もこのどちらかに含まれます。
それぞれどのようなプラスチックなのでしょうか?

 


熱可塑性プラスチック

熱を加えると柔らかくなり、冷めると固くなる。
加工しやすい。
熱で溶かすことができるのでリサイクルしやすい。
耐熱温度100℃を基準に汎用プラスチックエンジニアリングプラスチックに分類される。
包装フィルム、液体容器、水道管、家電製品、自動車部品など幅広い製品に使用されている。


■主な熱可塑性プラスチック

ポリプロピレン(PP)
生産量の多いプラスチックのひとつで、クリアファイルやラップなどの包装材やロープ、食品パッケージ、衣装ケース、注射器などの医療用品、自動車部品、不織布マスクなど数多くの製品に使用されている。

ポリエチレンテレフタレート(PET)
飲料・調味料などの容器(ペットボトル)、総菜の容器、製品パッケージなど主に透明度と固さが求められる物に使われる。繊維で有名なポリエステルはPETを繊維状にしたもので、ペットボトルからリサイクルされている。

ポリ塩化ビニル(PVC)
軟質と硬質があり、柔らかいものではラップフィルム、壁紙や床材、合成皮革など、固いものではカード類、水道管、窓枠、雨樋などに使われている。製造過程で添加する可塑剤(かそざい)の量により柔らかさを調整することができる。

ポリエチレン(PE)
世界で最も生産量の多いプラスチック。低密度PE(LDPE)は透明ポリ袋、包装用フィルム、電線被覆材料などに使用されている。 高密度PE(HDPE)はレジ袋、バケツ、灯油タンクなどに使用されている。

アクリル(PMMA)
ガラスを上回る透過性に加え、衝撃に対する耐性は一般ガラスの7倍~18倍。割れにくく耐候性、耐久性が高い。また、軽く加工しやすいのも特長で、メガネのレンズや水槽などガラスの代替として使用されている。

 


熱硬化性プラスチック

熱を加えると固くなる。
耐熱性に優れ、薬品に強く電気を通しにくい。
熱を加えても柔らかくならないのでリサイクルが難しい。
柔軟性に乏しく強い衝撃に弱い。
主に電気部品や半導体部品、自動車部品、食器類・衣類などに使用されている。

 

■主な熱硬化性プラスチック

エポキシ(EP)
固く耐薬品性、耐水性に優れる。また高温にも耐えられるほか、絶縁性にも優れていることから電子回路の基盤やコンデンサーやICなどの電子部品にも使用されている。

メラミン(MF)
割れない食器として馴染みのあるメラミン。傷や汚れがつきにくく食器が熱くなりにくいといった特長がある。その他洗剤を使わず汚れを落とすスポンジなどにも使われている。

フェノール(PF)
ベークライトとも呼ばれ、最も古いプラスチックとされる。主に絶縁体としてプリント配線基板や配電盤、変圧器などに使われたり、スイッチやつまみなどに使用されている。

ポリウレタン(PU)
安価で皮のような質感が人気のフェイクレザーの正体がこのポリウレタン。衣類やバッグなどでよく見かけるが、製造から3年ほどで寿命を迎えるので注意が必要らしい。靴のソールやスマホケースなどに使われる熱可塑性ポリウレタン(TPU)もある。

ケイ素樹脂(Si)
一般的にはシリコンと呼ばれている。ゴムのような弾性と200℃以上の高い耐熱性が特長。逆に-60℃まで弾性を保つ。どちらかというとプラスチックというよりもゴムの仲間。

 


熱可塑性プラスチックは、熱を加えると溶けて冷ますと固まるのでチョコレートに例えられ、熱硬化性プラスチック一度固まると熱を加えても溶けないのでビスケット(クッキー)に例えられます。プラスチックのリサイクルは主に熱を加えるとやわらかくなる性質を利用しているため、熱可塑性プラスチックはリサイクルが容易な一方で、熱硬化性プラスチックは熱を加えても溶けないためリサイクルが難しい。そのため、クリアファイルなどに使われるPPや、ペットボトルに代表されるPET、そしてPVC(塩ビ)などの熱可塑性プラスチックはリサイクル化が進んでいる一方で、熱硬化性プラスチックのリサイクルは、まだ道筋がついていないのが現状のようです。

日本プラスチック工業連盟 統計資料より作成

 

しかし国内のプラスチック生産実績(2021年度 日本プラスチック工業連盟)を見ると、熱可塑性プラスチックは年間約936万トン、熱硬化性プラスチックは約89万トンとなっているので、熱硬化性プラスチックの生産比率の割合は全体の9%に過ぎず、国内で作られているプラスチックの約9割が熱可塑性プラスチックだということがわかります。
ふだん使っているプラスチック製品のほとんどが、チョコレートのように熱で溶けて冷えると固まる熱可塑性プラスチックなんですね。

 


熱可塑性プラスチックは「耐熱温度」と「結晶化度」の違いにより分類される。

熱可塑性プラスチックは一般的に耐熱温度結晶化度の違いにより分類されます。
結晶化度とは分子の結びつきの度合いを示していて、結晶化度が高いほど分子同士がしっかりと結びつき周期的な配列で固形化し、逆に低いと分子同士が結びつかず不規則に絡み合ったまま固形化します。

耐熱温度100℃未満:汎用プラスチック
耐熱温度100℃以上:エンジニアリングプラスチック

結晶化度が高い:結晶性プラスチック
結晶化度が低い:非結晶性プラスチック

 

■熱可塑性プラスチックの分類

耐熱温度耐熱温度による分類結晶化度による分類例

100℃未満

 

 

 

 

汎用プラスチック

 

 

 

 

●結晶性プラスチック
PP(ポリプロピレン)
PE(ポリエチレン)

●非結晶性プラスチック
PVC(ポリ塩化ビニル)
PS(ポリスチレン)
PMMA(アクリル樹脂)

100℃以上

 

 

 

エンジニアリングプラスチック
※耐熱温度150℃以上はスーパーエンジニアリングプラスチックに分類

 

 

●結晶性プラスチック
PET(ポリエチレンテレフタレート)
PA(ポリアミド)

●非結晶性プラスチック
PC(ポリカーボネート)

 

100℃未満の耐熱性をもつプラスチックは汎用プラスチックに分類され、日常生活に欠かせないさまざまな製品に使用されています。100℃以上の耐熱性を持つエンジニアリングプラスチックは、軽量化や低コスト化のため金属の代わりに多くの工業製品に使われています。
結晶性プラスチック(PP・PETなど)は分子同士の結びつきが強く、密度が高いため薬品や有機溶剤などに強いといった特長がある一方で、耐候性については劣化が早く進む傾向があります。
逆に非結晶性プラスチック(PVCなど)は膨潤(ぼうじゅん)・溶解しやすく有機溶剤などには適さない一方、耐候性に優れるほか、印刷インキの適性も良いとされています。

 


当社が印刷している主なプラスチックは3種類。

PP(ポリプロピレン)
PET(ポリエチレンテレフタレート)
PVC(ポリ塩化ビニル)

当社がUVオフセット印刷機で印刷しているのは主にこの3つ。全て熱可塑性プラスチックです。
PPとPETはリサイクルが進んでいて、PPは通常タイプと再生タイプがあり、PETは再生率70%の再生タイプとなります。
PVCはカードなどに使える硬質タイプとポーチなどに適した軟質タイプがあります。
印刷可能なプラスチックシートの厚みは0.2mm~0.8mmとなっています。

 

PP(ポリプロピレン)
【特長】
高透明タイプもある。
再生タイプがある(クリアファイル向けは再生率100%)
PPを配合したエコ素材の種類が豊富。
耐薬品性・耐熱性に優れる。
しなやかで加工性に優れる。
耐衝撃性に優れ割れにくい。
汎用プラスチックのなかで最も軽い(水1に対する比重0.90~0.91)
【主な製品】
クリアファイル、マスクケース、うちわ、まな板など
【注意点】
耐候性があまりないので、屋外では用途が限定的

●再生PP高透明についてはこちら
再生PPを使用した“エコ”なクリアファイルが持つエコだけじゃない魅力とは?

●ライスレジン、LIMEXなど脱プラ時代の素材を紹介
脱プラスチック時代のクリアファイル。素材選びのポイントについてまとめてみました。

 

PET(ポリエチレンテレフタレート)
【特長】
透明度が高い
耐薬品性、耐熱性に優れる。
再生タイプがある。(クリアファイル向けは再生率70%)
PPよりも固く張りがあり、耐衝撃性にも優れる。
酸素を多く含むので比較的石油の使用量が少なく、燃焼時の発熱量が低め。
【主な製品】
クリアファイル、POP類、パッケージなど
【注意点】
傷が付きやすい
PPにくらべ重たい(水1に対する比重1.34~1.39)

●PETを含むエコ素材についてはこちら
【保存版】エコな素材も充実のクリアファイルの素材について調べてみた

 

PVC(ポリ塩化ビニル)
【特長】
硬質と軟質のシートがある(樹脂を柔らかくする可塑剤(かそざい)の添加による)
環境に優しい(原料の約6割は塩なので意外にも石油依存度は低め)
加工性に優れる
【主な製品】
硬質:カード類、軟質:ケース・ポーチ類、ブックカバーなど
【注意点】
耐候性、耐久性に優れる一方で、耐熱性、耐衝撃性はイマイチ。
PPにくらべ重たい(水1に対する比重1.35~1.45)
家庭ゴミは可燃ゴミとして処分される(サーマルリサイクル)

●PVCに関する過去ブログはこちら
ビニール素材 (PVC) が環境に悪いって昔の話? 安全性は?? 調べてみると意外な結果に‥

因みにこれらのプラスチックを使い印刷物を製造する際に生じるゴミは、全てリサイクル業者によって引き取られリサイクル処理されており、バイオマスプラスチックなどリサイクルできないものは、可燃ゴミとして引き取られ熱エネルギーとして回収されるなどしています。

 

再生プラスチックやバイオマスプラスチックなど、環境に優しいプラスチックへの代替や、より環境負荷の少ない素材への切り替えが進んでいます。しかし、プラスチックの多くはリサイクルすることができるので、正しく分別すれば資源として生まれ変わり環境負荷を軽減できます。本稿で紹介した通りプラスチックにはとても多くの種類がありますが、それらの特性を知ることで正しくプラスチックを使うことができたり、正しくリサイクルができるのではないでしょうか。
プラスチックをバイオマスなどの素材に置き換えていくことは環境にとって大切ですが、同時にプラスチックを使用する側の理解も必要です。日ごろ何気なく使っているプラスチック製品の種類について知ることは、環境を守ることにもつながるということなんだと思います。


本稿は主に下記のサイトを参考に作成しました。

統計資料/日本プラスチック工業連盟
プラスチックの種類と特徴、用途について徹底解説!/Lab BRAINS
製品設計知識 熱可塑性プラスチック/田口技術士事務所
プラスチック材料の基礎知識~種類・特徴・用途/プラスチックス・ジャパン株式会社
プラスチックのはてな/一般社団法人プラスチック循環利用協会